かね一商店は、戦後から大阪で大工道具や鉄筋工具、鉋、墨壺等を販売している工具店です。

かね一商店は、終戦直後に創業いたしました。当時の大阪、そして日本橋は焼け野原と言ってもいい状態で、当店がある場所からでも遠く大阪市内の中心部が見えたといいます。今では考えられないような光景の中、かね一商店はスタートしました。
創業以前は、創業者の先代自らが大工をしていたこともあり、大工が必要とする工具を揃えられるお店づくりをしたいというのが、かね一商店創業時からの想いです。
創業から半世紀以上が過ぎた現在でも、かね一商店は創業時と同じ場所で、創業時と同じく工具の専門店をしております。ご来店されるお客様の中には古くからの常連さんも多く、「かね一なら欲しいもの、良いものがある」という信頼を寄せていただいております。こうした目に見えない信頼を築き上げるのも、長い時間が積み重なってこそのものだと思います。
かね一商店の歴史は、お客様と築き上げてきた信頼の積み重ねそのものなのです。これからも信頼を大切にして、期待にお応えできる専門店であり続けたいと考えております。

かね一商店に並んでいる道具は、大工仕事や職人仕事などに使われるものがほとんどです。そのため、昔から当店へお越しになるお客様というのは、大工や職人の方がほとんどでした。
その一方で、良いものというのは本来の用途以外でも使われることが少なくありません。最近ではこれまでとは違う層のお客様も来られるようになりました。楽器をつくる方、能面をつくる方、家具をつくる方…さらには、趣味で家づくりを始めた方が道具をお買い求めに来られたこともあります。
多種多様なニーズがある中で、近年では昔ながらの良いものが見直されることも多くなりました。伝統的な技術を上手に取り入れながらお客様のニーズに応えていく中で、やはり一番大切なのは良いものを見極め、仕入れること。そういった創業時から続くかね一商店のポリシーを守り続けることだと実感しております。

近年ではステンレスやアルミ、プラスチックなどの素材を使った工具がとても多くなりました。これらの工具はお手入れも楽で、しかも安く買えるので人気です。しかし、安くて使いやすければ全ての人から支持されるわけではないのが、プロの世界です。職人の手仕事によって、一つひとつ丁寧につくられたものや古くからある伝統的な工具など、そのこだわりはとても奥深いものです。
数多く量産されている工具とは違い、かね一の道具は決して取り扱いやすい素材ばかりではありません。本来、良いものは長持ちすると言われますが、それは日々のきめ細やかなお手入れがあってのことです。そのため、当店ではまだ誰もお買い求めになっておらず店頭に並んでいる時も工具が劣化してしまわないように、常に丁寧に磨いています。
まるで生き物の世話をするかのように、きめ細やかな手入れをするからこそ、工具はお客様のもとで期待通りの働きをしてくれるのです。